【インド】ガンジス川で沐浴したら悟りは開けるのか?

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中学時代『読書部』というレアな部に所属していた私は、毎日図書館で旅行記を読んでいた。中でも “インド旅行記” のインパクトはすさまじく、「いつか行かねば」という想いをかき立てられたものだ。お釈迦様のみならず数多の人がインドで悟りを開いたらしい。

今回ようやく訪れたインド・バラナシは多くの旅行記に書かれていた通り、非常に汚く混沌としていた。路地で暴走バイクを避けた勢いで牛フンをフンづけたりするたび、「私は一体なぜここに?」というツラ〜イ気持ちになる。

しかし手塚治虫の名作『ブッダ』によると、お釈迦様は苦行のやりすぎで死にかけた先に悟りを開いたのだそうだ。「困難は自分で掴みにいけ」ということである。……よ〜し、こうなったらガンガンいったろ。とりあえず、いっちょガンジス入ったろ!

・ガンガーシャワー

タオル片手にガンジス川へ向かうと、道ゆくインド人たちから「ガンガーシャワーか」と声がかかった。意外とポップな呼び名だ。

本で読んだり人から聞いてイメージしていた『ガンジス川』は、まっこと失礼ながら「ドブくらい汚い川」であった。しかし実際に見てみると、水は井の頭公園の池と同じくらいの透明度……つまり、けっこう綺麗なのである。

現地の人の話によると、以前は確かにドブくらい汚かったが、ここ数年で国が清掃に力を入れているのだそうだ。正直これなら全然入れそうである。

しかし見た目は綺麗でも、あらゆる汚水がこの川に流れ込んでいることには変わりないのだという。当初は全身浸かる予定だったが、宿の人に「顔まで浸かるのは絶対やめておけ」と言われた

現地の人が川の水で口をゆすいだりする姿が見られるので、つい真似してしまいそうになる。でもおそらく彼らとは免疫が違うのだろう。

それはそうと、「インドは常夏」というイメージを持つ読者もいるかと思う。しかし首都デリーをはじめとしたインド北部にはしっかりと冬がある。12月現在のバラナシは昼間でも半袖では肌寒く、明け方や夜間はダウンジャケットが必要なほどだ。

よって今回の沐浴が汚さというより、「寒さとの戦い」であることは言うまでもない。憂鬱な気持ち……。

・いってきまぁ〜す……

ガンジス川で沐浴をするインド人は多い。彼らは何も修行僧とかではなく、普通の洋服を着た一般庶民たちだ。男性はパンツ1枚となり楽しそうに泳いだりしているが、女性は基本的にサリーでパチャパチャと浸かる程度な模様。

サリーを所有していない私は “汚いTシャツにインドで買ったモンペ” という、よくある旅行者スタイルで沐浴に臨むことにした。沐浴に限らず、インドで女性のショートパンツやミニスカートは良しとされないようだ。もちろん水着はもってのほかなので注意しよう。

……じゃ、いってきま〜す……

……マジで?

……ホントにいってきま〜す…………

(ピチャ)ヒッ! 冷たい!

水温を例えるなら「最強に寒い日のプール」くらい。つまり、辛いけど入れないほどではない

うぅ……寒い……

これ、急に深くなったりしない……?

キャッ! なんか踏んだ! もう無理!

いや、意外といけそうかも……?

……と、そろそろ腰まで水に浸かろうかという瞬間。背後から突然大きな声が響いた

・世話焼きオバサンが登場

???「おまちなさい!」

私「えっ?」

オバサン「それ以上進んではならぬ!」

私「あ、あなたは……?」

オバサン「その場でダウン! 進まずに腰をおろしなさい!」

私「あ、ハイ……」

オバサン「もっと! もっとダウン!」

私「ハイ……」

・インドって一体

突然現れたオバサン指導のもとガンジス川に浸かりながら、私は思った。向こう岸まで到達する勢いで川を泳ぐインド人を何人も見ていたので、『これ以上沖へ進んではいけない決まり』が存在しているとは考えにくい。

よってこれはオバサンがオバサンの価値観のもと、「それ以上進まないほうがいい」と勝手に言っているにすぎないのではないか。それは非常に余計なお世話である。しかし……『女性のみ、これ以上進んではいけない決まり』がある可能性だと、完全には否定しきれないぞ。

インドは空港の手荷物検査も男性と女性でレーンが分かれているなど、レッキとした男女差が存在している国なのだ。もしもこのオバサンの言っていることが本物のルールだったとしたら、私はあやうくとんだバチあたりになるところだった。

だがしかし……これが勝手な世話焼きだったとしたら……私の『悟り開き計画』が、このオバサンのおかげでぶち壊しということになる。ならば私は一体なんのためにインドへ来たというのか? あぁ畜生……雄大なガンジスの流れに包まれながら、オバサンのことで頭がいっぱいだ!

ハッ!

ひょっとして……これが噂の『カルマ』ってやつじゃないのか!?

・ありがとうガンジス

仏教におけるカルマ(業)は、心で思うだけでも生まれるのだという。だとすればオバサンに対する不信感、鬱陶しく感じる気持ち、損したという思い……そういった負の感情が、カルマとなって私に災いをもたらすということになるのではないか。

だとすればオバサンよ、私はあなたを許そう……いや、むしろ感謝しようと思う。このまま対岸の方へ進めば私はインド警察のお世話になっていたかもしれないし、おぼれて死んでいた可能性だってある。

ありがとうオバサン。そしてありがとう……ガンジス川。

……ってことでいいんじゃないカナ? ちょっとは悟りに近づいた気がする! よし、あーがろっと!

岸へ上がるとオバサンに「教えてやったから10ルピーよこせ」と言われた。私は喜んで20ルピー(約31円)渡したよ。そして言ったのさ……「一緒に写真を撮ろう」ってね!

手塚治虫の名作『ブッダ』では、お釈迦様は死にかけるくらい苦しい苦行を行ったのち「こんなに苦しいことしても意味がない」と思ったという描写がある。しかしお釈迦様とて実際に苦行を行ったからこそ、その境地に至ったわけで、つまりこの世の何事にもちゃんと意味があるのだ。

今回私はガンジス川で「即悟り」とはならなかったけれど、着実に悟りへ前進したと確信している。何でもやってみるものである。日本へ帰ったら、次は山奥で滝に打たれてみるつもりだ。

Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

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