五輪組織委員会がコミケを参考に ← コミケに毎回参加するオタクが失笑した理由

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2020年1月5日のNHKの記事にて、東京オリンピックについてのニュースでなにやら面白い情報が出てきました。組織委員会が、コミケを参考に15万人程度と予想される五輪の来場者をさばこうとしているというもの。

いやもう、乾いた笑いが出ましたね。分かってないにもほどがあるだろ……と。NHKの記事を読むと、どうやら委員の方々は先日のC97を視察していたように受け取れます。しかし、彼らはどうやら外側だけ見て、本質は何も見えていなかったもよう

・甘い

記事の最後は委員会のコメントでしめられています。

「コミックマーケットとオリンピックは、客の層や来場する時間帯などで異なる点はあるが、駅からの動線計画や行列の作り方、さらに行列が横断歩道を渡るときに何秒くらい時間がかかるか、などは視察して参考にしている」

甘いですね。甘すぎるし、ついでに言うと目が節穴すぎます。頭蓋骨の中も がらんどうなのでは。コミケがどういう場所なのか、どういう人によるものなのか全く分かっていない。お役所仕事感が半端ありません。

歴戦の……というにはまだまだ若輩ながら、毎回コミケに全日参加してきた一介のオタクである筆者の目からすると、突っ込みたいところが多すぎます。

いろいろ書いていくにあたって、便宜上筆者のようにコミケに毎回参加する方々を「オタク」。そしてコミケになどついぞ参加したことも、するつもりも無いものの、オリンピックには来るであろう方々を「一般人」とさせていただきます。

・そもそも客じゃない

まず、オリンピックを見に行くその辺の一般人と、コミケに参じるオタクでは、列に並ぶ時の自己認識が違います。コミケに参加するオタクは「お客様」ではないのです。自分を客だと思ってる参加者など一人もいないでしょう。

運営やサークル参加者共々、コミケを作り上げる一員であるという意識が強くあります。これはもうずっと続いている文化。運営、サークル、一般参加の全員で、いいコミケにするという、そういう矜持を持っています

コミケに来る全てのオタクに、運営からもてなして貰おう的な考えは皆無。開催中は全員がコミケを構成する歯車になります。だから猛暑にも極寒にも悪天候にも黙って耐える。

始発から開演までのおよそ5時間くらい、一切文句言うことも、騒ぐことも、列を乱すことも無く粛々と並べるのです。並ぶ側がこのようだからこそ、運営もまた列をさばける。

・お客様という自己認識からくる甘えと傲慢さ

それでは、オリンピックに一般参加する人々は、自分自身とオリンピックのスタッフをどのように認識するのでしょうか。まだ始まってもいませんが……きっと「お客様」と「サービスを提供する側」でしょう

そういう場合の行列がどうなるのか……くしくも2018年の福袋の企画で行列に並んだ時に私自身が一般人による列とコミケの列の違いに言及していました。

「走り回ったりグズる子供に、無意味にキレ散らかすおっさんにウェイるパリピで地獄絵図www」

私の口調も酷いですが、福袋の待機列もまた酷いものでした。この具体例に対して、一つずついきましょう。

まずコミケに走り回る子供はいません。冬の福袋程度ならともかく、夏のコミケ相当の混雑に子供はNGでしょう。体力的に耐えかねるだろうし、連れてくる親はどうかしている……と、個人的に思います。

でもオリンピックに来る一般参加者ならどうでしょう。そもそも度を越えた混雑を経験したことが無いかも知れません。猛暑の中で子連れとかあるんじゃないかなと危惧しています。あるいは、運営が何とかしてくれて当然的な? もしいたとしたら、わがままな考えです。

ちなみに2019年の夏コミは、大の大人でも倒れるレベルでした。私自身、カメラを握る手が日光で火傷を負って酷いことになっていましたし、コスプレイヤーの中には靴底が溶けていた方もいました。

日焼け止めなど、塗る端から流れ落ちるので無駄というレベル。オリンピック開催時の天候がどうなるのかはわかりません。ですが、もし2019年の夏コミと同じような具合であれば、子供の皮膚など一瞬でやられるでしょう。

次はキレる人です。ほんの40分とかそこらなのに、列が進まないことにキレ散らかす福袋待ちのおっさん。誘導している店員に食ってかかったり、店員がいなければ一人でブツブツと文句を垂れ流す。周囲一帯の空気は悪化の一途。

コミケの待機列にこんな迷惑なおっさんはいません。冬コミの待機列は日の出前の始発から朝10時の開演までの5時間ほど、海からの風に吹かれながらとなり過酷さは段違いですが、コミケのオタクはこのような愚行に走りません

きっとこの手のおっさんは、オリンピックの観戦時においてもキレ散らかし、スタッフに食ってかかり、一人でブツブツと文句を垂れ流すのでしょう。

最後はウェイるパリピですね。若い男性グループが、缶チューハイ片手にウェイウェイと騒ぎながら並んでいたのです。列は乱れますが、そんなの知ったこっちゃなし。

「寒ぃーーーーーーーー!!!」などと列を離れて叫んでみせたりして、はなはだ迷惑でした。おそらく彼らの価値観では、その行為こそ最高級のアピールの方法なのでしょう。

言うまでもなくコミケにはいませんし、たぶん無縁のタイプ。きっと彼らはオリンピックの観戦時においても、缶チューハイ片手にウェイウェイと騒ぎ「暑ぃーーーーーーーー!!!」などと列を離れて叫んでみせるのでしょう。

・愚行の理由

これら全ては、本人たちが元から愚かだというのもあるかと思います。ですが、自らを客と認識しているか否か……というところもまた大きく影響していると思うのです。

キレるおっさんだって、きっと仕事で取引先や客相手にむやみにキレたりはしないでしょう。ウェイる絶叫パリピも、職場で缶チューハイ片手に叫んだりしないでしょう。していたら、福袋を買いに来るだけの金銭的余裕は無いでしょうからね。

コミケに来るオタクたちというのは、私欲を垂れ流すお客様スタイルではなく、プライベートながらもまるで職務に励む労働者……あるいは任務に就く兵隊のごとき心構えで、率先して自分を律し、場の秩序を乱さぬよう努めているわけです。

ゆえに歴戦のコミケ運営とて、誘導対象がオタクでは無く一般人になったら、おそらくは上手くさばけないんじゃないかと思います。行列を制御するのは運営の方策だけではありません。行列を成す人々の意識もまた大きく影響しますので。

酷暑の中で行列に参加する一般人の群れがどうなるか……泣き喚き、暴れ、スタッフに食って掛かったりすることが容易に想像されてしまう。コンビニのレジ待ちですら、痺れを切らして店員にオラつく人が全国にいるのが実情じゃないですか。

・備えが違う

ここまでは、コミケのオタクにはいないものの、一般人による行列ではありがちな、好ましくない人々について述べてきました。しかし、これだけではありません。たとえ礼節と忍耐を持って並べる一般人でも、オリンピックでは上手くやれないかもしれない理由がもう一つあります。

それは、意識と経験の違いからくる事前の備えの差です。冬は寒いだけですが、夏コミは毎回なんだかんだでそれなりに過酷です。しかし、そのわりに倒れる者はそう多くない。コミケのオタクたちは、会場入りする前の備えから違うからです。

例えば私の場合、夏コミに参加したときの鞄の中には3リットル分の飲み物と、袋丸ごとのロックアイスが入っていました。その根底にあるのはやはり、客じゃないという意識からです。自分で何とかするのが大前提なので。そして何度も参加してきたことによる経験です。

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今日の作戦 2本入ってる 原理主義的過激派だわ

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私個人に限らずとも、皆このような備えをしているはず。なぜなら、コミケの時期にはオタクたちによって備えるよう啓蒙活動が活発になるから……そして、経験として必須だと理解しているからです。

初参加の者であっても、この時期には長年蓄積されてきた暑さへの備え方が毎年ネットでシェアされるため、それを参考に真剣に備えます。

そういう文化ができているところもまた、コミケがそれなりに安定して行われ続ける理由でしょう。そういったものが一切無く、多数が無策で参加しようものなら倒れる者はもっと多いでしょう

こうして備えてもなお、オタクは慢心しません。経験から、備えたうえでなお過酷だと分かっているため、覚悟もできている。だからこそ文句を垂れ流したりすることなく、誘導にしたがって遅延無く行進し続けられるのです。

きたるオリンピックは、まさにこの手のノウハウや文化が全く無いまま多数が無策で参加しそうなイベント。多少メディアで備えについて啓蒙したところで、覚悟まではできますまい。覚悟の無い人間というのは、ストレスに弱いものです。はたしてどうなることやら。

・参考にするのは無謀

NHKの記事によると、組織委員会は横断歩道の渡る時間などを参考にしたとありましたが、オリンピックの観戦者には高齢者もそこそこいることでしょう。そうなると歩く速度すら、コミケのオタクとオリンピック観戦の一般人は違うはず

国内最大規模の動員数を誇るコミケは、このように何もかもが特殊な……ともすれば「コミケに参加することにのみ特化した数十万人のプロ集団」によってとりおこなわれていると言っても過言ではないわけです。

五輪の組織委員会の皆さん、コミケを参考にしてできる気になるのはよろしくありません。コミケ会場に集った人々の本質を何も分かっていない。にわかには信じがたい内容かもしれませんが、これはいたって真面目な内容です。

コミケのオタクは、一般人からしたら想像もできないレベルに仕上がっている行列待機のプロ。真冬に吹き荒ぶ海風の中でそこらの地べたに何時間も大人しく座り続けるなど、15万人の一般人に期待できますか? 我々19万人のオタクにはできるし、これまで何度もやってきました。

とんでもない暑さのなか、直射日光に晒されたり、時にはビッグサイト外周をぐるりと数キロ行進させられてなお英気を損なわないような強行軍が、一般人にできるとでも? 我々にとってはいつものこと。

文字にすれば混雑は混雑で、一見すると同類のもの。しかし、その混雑を成す構成分子としての一般人とオタクでは、覚悟、経験、備えなど全てが違うのです。御するための難易度は段違い。

何とかしようと色んなものから学ぼうとする姿勢は素晴らしいですが、ゆめゆめコミケの猿真似などしないことです。経験豊富なプロ集団による曲芸を、素人が見よう見まねで演じようとするようなもの。惨事にしかなりますまい。

参照元:NHK
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.

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