誰が言ったのか忘れてしまった「完ぺきすぎる 3つの願い」/ その出典元を20年越しで突き止めた!

未分類
この記事は約5分で読めます。

もし願いごとを3つ叶えてもらえるとしたら、あなたは何を願うだろうか? 金持ちになりたいとか、不老不死になりたい。過去に戻りたい、もしくは遠い未来を見てみたい。それもいいと思う。たとえ叶わなかったとしても、それを願うのは自由だ。

「もし願いが叶うなら?」、そんな月並みな質問を尋ねられる度に、私(佐藤)はあることを思い出す。それは、20年以上前に読んだ雑誌に掲載された、あるバンドの女性ボーカルが答えたことだ。彼女の回答は、少なくとも私にとって完ぺきだと感じた。彼女の人柄を説明するのに、十分すぎる内容だったのである。

・願いが叶うなら

人柄を知るには十分な回答だったはずなのに、その人が誰だったのかをすっかり忘れている。しかも、それがどの雑誌に掲載されていたのかもわからない。なんとも片手落ちの記憶で我ながら情けないが、その内容は覚えている。

「風邪をひきませんように」
「猫と話ができますように」
「もう2度とバカに出会いませんように」

この3つだった……はずだ。なぜ覚えているかというと、痛く共感したからである。不老不死なんか望まないが、せめて風邪くらいひかずに過ごしたい。当時1人暮らしでオス猫を飼っていた私は、彼が何を考えているのか少しでも知りたかった。

そして、この願いを知った当時の私はたしか20歳そこそこだったはず。周りの大人たちの発言がとにかくイヤで、出来れば面倒ごとを言う人には会いたくなかった。振り返れば私が子どもであるがゆえ、そんな情緒に駆られたのだろう。

その3つの願いがスッと腑に落ちて、以来「もし願いが……」という質問を聞くたびに思い出していた。

いつ誰が言った言葉だったのか? 何という雑誌に掲載されていたものなのか? 思い出したら調べたい。そう思いながらも、その手がかりさえつかめず、ただ静かに時が過ぎ去っていった。忘れそうになると誰かがいう「もし願いが……」、この問いは時代を超えた普遍性を帯びたものだ。そうして忘れそうになる度に、誰かが不規則的に問いを投げかけてくれた。

「もし願いが叶うなら……」と

・思わぬところで発見

それから長い月日を経て、思い出すきっかけが突然訪れた。上京時に荷物の大半を置いてきてしまった私は、今年帰省した際に、まだ置き忘れたものはなかったかと母親に尋ねた。すると翌日、カラーボックスとダンボールが1つずつ見つかったという。その中には、小・中・高の卒業アルバム。アルバムに入れていない写真が数十枚。それから使いかけのノートが数冊と、バンドのライブ映像を収めたVHSのテープがあった。

ノートには曲を作っていた時のつたない詞や、今見てもよくわからないアイディアらしきモノが記されている。中には、怪しい精神状態の時に書いたと思われる理解不能の図形など。何があったんだ、俺……。

それらに紛れて、日記らしきものが綴られているのを発見した。1998年11月11日に始まったその記述は、翌99年1月31日に終わっている。この一連の日記が終了する数日前の25日に、とても重要な記述があることに気付いた。当時25歳の私はこう記している。

今日溝口(鳥取県西伯郡伯耆町)のポプラで買ったロッキンオンにサイコ・カウチと言うコーナーがあって、色々なアーティスト(月替わり)に端的で核心的な質問をあびせ、その人のパーソナリティをうかがうと言う面白い企画がのっていた。

今回は第2回でロイヤル・トラックスのジェニファー・ヘレマがとりあげられていた。彼女の言葉で特に目を引いたのは、人生訓「めちゃめちゃになるほど苦しむに値することなんてない」

さらにこう続く。

もし願いが3つ叶うなら何を願うか? 「もう風邪はひきませんように。もう2度と馬鹿野郎に出くわしませんように。猫が喋れるようになりますように。」(以上、原文まま)

あった! これだった!! ロッキング・オンに載っていたのか! 1999年発行のものだが、何月号かは記していない。とにかく、まだ油断はできん。日記が正確なはずがない。当時勘違いしている可能性も考えられる。ということで、バックナンバーを取り寄せることにした。

・バックナンバーを探して

ネットで “ロッキング・オン バックナンバー” と検索したら、雑誌販売と定期購読に特化したオンライン書店「株式会社富士山マガジンサービス」がヒットした。調べてみたところ、もっとも古いものでも2003年。あと4年足りん!

幸い、神田神保町の文献書院が古いロッキング・オンの在庫を持っている。1999年より前のものさえある。だが、ジェニファー・ヘレマが取り上げられているサイコ・カウチのコーナーが掲載されている号を持っているかどうかは不明だ。

・新たな願い

確信は持てないが、1999年2月号ではないだろうか。とにかく取り寄せて確認することにした。注文から2日後、雑誌が手元に届いた。

表紙には、ノエル・ギャラガ―とリアム・ギャラガ―の2人。今では考えられない……。そして、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、クーラ・シェイカー、ビースティ・ボーイズなど、気になる名前がズラリ。これ1冊、1日中読んでいても飽きない! 絶対飽きない!!

しかし、私はゆっくりページをめくっている場合じゃない。自分の記憶をたしかめるんだ。あの3つの願いの出典を明らかにしたいんだ。そうして思い出に浸ることなくページをめくっていくと……あった!

P116 ミュージシャン臨床心理学講座「サイコ・カウチ」 第2回

あったあった! あれは幻ではなかった! 思わず小躍りしたくなる。しかもだ、質問を受けているのはロイヤル・トラックスのジェニファー・ヘレマ。彼女はやっぱりこう答えている。

『もう風邪はひきませんように』

『もう2度と馬鹿野郎に出くわしませんように』

『猫が喋れるようになりますように』

今になって思う、私は「猫と話せますように」と覚えていたが、「猫が喋れるようになりますように」の方がずっといい願いだ。なぜなら、自分だけが猫と話せるよりも、猫が喋りかけてくれる方がずっと面白そうだ。群れになった猫が雑談している姿を見てみたい。気まぐれな猫が、稀に甘え声で話しかけてくるところを見てみたい。本当に猫が喋れるようになったらいいのに。

私の記憶は正しく修正された、そして今から25年前、さらにもっと前からロッキング・オンがあったことを有難く思う。そうでなければ、私の心の奥底にいつまでも根付く言葉に出会うこともなかった。ロッキング・オンがあって良かった。サイコ・カウチのコーナーがあって良かった。できることなら、私は文章を書く者の端くれとして、「いつまでも人の心に根付くものを紡ぎたい」、それがこれからの私の願いだ。

参照元:ロッキング・オン株式会社富士山マガジンサービス文献書院
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24

タイトルとURLをコピーしました