
ストレンジ・デイズ〜1999年12月31日の世紀末パーティと電子ドラッグ「スクイッド」
「世紀末」「ミレニアム」と盛んに騒がれた1999〜2000年頃。20世紀の終わりに漂っていた倦怠感のようなものと、来たるべきまだ見ぬ21世紀への期待感のようなものが混ざり合って、何か異様とも思える空気が巨大なビル群や人々を覆っていた。
また、インターネット普及によるサイバースペース(電脳空間)感覚が身近になり、日本でもiモードの登場によってバッグやポケットに入れて持ち歩いていた携帯電話にその世界観が組み込まれた。
映画『ストレンジ・デイズ』(Strange Days/1995)はサブタイトルに「1999年12月31日」とあるように、まさにそんな時代の喧騒ぶりを描いた作品だった。製作・脚本を担当したのはジェームズ・キャメロン。『ターミネーター』シリーズや『エイリアン2』で勢いのあったキャメロンが長年温めてきた企画で、自身の製作会社ライトストーム・エンターテイメントによる『トゥルー・ライズ』に続く第2弾作品にあたる。
舞台は1999年の大晦日寸前のロサンゼルス。モラルが後退して街の至る所で犯罪が多発し、人種差別をきっかけとする暴動ムードも高まりつつある。人々はそんな崩壊寸前の社会でメガパーティを祝福することに心奪われている。
キャメロンはこうした描写を軸に、もう一つ強烈な仕掛けを用意した。それは「スクイッド」と呼ばれる超電導量子干渉装置で、他人の体験を五感や感情とともに再生できるデジタル・ディスク。作家ウィリアム・ギブソンの原作による映画『JM』でも登場したガジェットで、非合法電子ドラッグだ。
セックスやスリルを扱う「スクイッド」の売人として退廃的な暮らしをしているレニーは、警官時代に知り合った売春婦フェイスとの想い出の中に生きている。フェイスは今は音楽業界のドンであるガントの女となり、ロサンゼルスのクラブで歌手活動をしている。
ある夜、売春婦のアイリスが助けを求めてレニーのもとにやって来る。「フェイスも危ない」と一言残して。一方、TVニュースは若い黒人たちの指導者的存在である人気ラッパー・ジェリコが何者かに射殺されたことを伝えていた。
後日、レニーのもとにあるディスクが届けられる。「スクイッド」で体感するレニーだが、それはホテルでアイリスが殺害されるという残虐なものだった。異常事態を感じたレニーは、友人であるシングルマザーで美しいメイスや探偵のマックスの力を借りて事件..