
ロッカーズ〜『ハーダー・ゼイ・カム』に続くジャマイカとレゲエを描いた名作
『ロッカーズ』(Rockers/1978)
ジャマイカの心臓の鼓動をとらえたレベル・ミュージック=レゲエが、世界に放たれたのは1972年のこと。初の自国製作映画『ハーダー・ゼイ・カム』と、翌年にリリースされることになるザ・ウェイラーズの『Catch a Fire』が録音されたのだ。
ローリング・ストーンズもエリック・クラプトンもスティーヴィー・ワンダーも、この新しい音楽に魅了された。そして映画に主演してサウンドトラックも歌ったジミー・クリフや、ラスタファリアニズムやドレッドロックスを広めたボブ・マーリィらが有名になった。また、イギリスのロンドンやバーミンガムではジャマイカ移民たちをルーツとしたブリティッシュ・レゲエ・シーンが活発化。同時期のパンクやニュー・ウェイヴ(例えばザ・クラッシュやブロンデイやポリスなど)にもその影響は浸透していった。
かつてアメリカのR&Bやソウルに影響を受けながら進化したジャマイカのローカル音楽(スカやロックステディ)だったが、このレゲエによって遂に世界的な音楽へと昇華していく。さらにサウンドシステム/DJ/ダブなどは、今度はNYでのヒップホップ/ラップ誕生への大きな要素にもなった。70年代はレゲエの黄金期でもあった。
そんな1978年、ジャマイカ映画『ロッカーズ』(Rockers)は公開された(アメリカや日本は1980年)。監督はギリシャ出身のテッド・バファルコス。特別な場所と特定の時期の重要性と神秘性を知っていた監督は、レゲエの持つ力をフィルムに収めるべくドキュメンタリーを撮ろうとするが、次第にストーリー性のある映画に取り組むことにした。
登場するのはバーニング・スピア、グレゴリー・アイザックス、ジェイコブ・ミラー(インナー・サークル)といったジャマイカで活躍するミュージシャンたち。みんな実名で出演した。主演を務めたのはリロイ・“ホースマウス”・ウォレス。
バファルコス監督によると、普通の撮影では生じない問題が相次いで起きて苦労したという。出演者の多くはゲットーに暮らしており(NYのそれではなく、掘立小屋が連なる風景をイメージしてほしい)、電話連絡など到底望めない。強烈なジャマイカ訛りの英語(パトワ語)の理解に悪戦苦闘するスタッフ。ロケ隊は金を持っているという噂を聞きつけ、ギャングにピストルで襲撃された夜もあったらしい。
それでも撮影..