デヴィッド・ボウイ 死を迎えるまでの日々
2016年1月10日、デヴィッド・ボウイが旅立った。
彼はその二日前の1月8日、69歳の誕生日に最新シングル「Lazarus」のミュージックビデオを公開したばかりだった。
同時発売されたアルバム『★(Blackstar)』は、発売一週目で14万6千枚(UK)18万1千枚(US)を売り上げ、「Lazarus」の動画はダウンロード数1千7百万に達した。
なんというタイミングなのだろう…
自らが演出したかのようなその死は、まさに“彼らしい”最期だった。
Lazarusとは聖書に登場するイエスが蘇生させたユダヤ人の男である。
このミュージックビデオに出てくる顔の覆いや白い服、そしてラストシーンでクローゼットの中に戻ってゆくボウイの姿は、洞穴に葬られたLazarusのイメージと重なってゆく…
<新約聖書―ヨハネによる福音書11章・Lazarusの復活>
http://art.pro.tok2.com/Bible/CLater/17Lazarus/17Lazarus.htm
その死からさかのぼること9年…
2007年1月、彼は60歳の誕生日を迎えた。
妻のイマン・アブドゥルマジドによると、彼が誕生日を特別騒ぎ立てるようなことはなかったという。
「たぶん幸せだったからじゃないかしら。私たちはごくシンプルに家庭生活を送っていたわ。その頃、彼はもうアルコールも絶っていたし、日常的に運動もしていたわ。」
この年、彼はイギリスの人気俳優リッキー・ジャーヴェィスのTVドラマ『Extras(スターに近づけ!)』にゲストとしてカメオ出演した。
主人公のリッキーに“哀れな小太り男”の歌を弾き語るシーンは、同ドラマの全話の中で最も面白かったシーンとして批評家達に称賛されたという。
当時、彼は自分自身に起きた心臓発作や母親の死をめぐり、人は誰もがいつかは死ぬ運命にあると感じるようになっていた。
「終わりというのがおぼろげに姿を見せはじめているのを実感している。僕にはあとどれだけの人生が残されているのだろう?これ以上に悲しいことはないよ。妻や幼い子供、愛するものすべてといつかは別れを告げなければならないことがわかっているんだから…」
2010年、63歳になった彼はカリブ海に浮かぶセントルシア島に別荘を購入した。
その家は、ピトンの火山を望む最高のロケーションに建っていて、ボウイと妻イマンはその..