誰かに見られてる〜ジョージ・ガーシュインの曲に触発された都会のためのサスペンス

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1987年といえば、日本ではバブル経済が幕開けたばかり。それはとてつもなく華やかで、余りにも眩しすぎる時代の始まりだった。1980年代の中でも特別な輝きを放つことになった数年間──「バブル80’s(バブル・エイティーズ)」という狂乱のパーティが開場した瞬間。そして「リッチ」と「トレンディ」がドレスコードになった。
特に都市部の20〜30代の男たち女たちは、流行や情報に心地よく踊らされることを歓迎した。最新を追求して余分なモノを買い持って満足感を得ることも、スタイリッュで少し虚飾じみた恋愛をすることも、全てが許されてカッコ良く映り始めた頃。DCブランドのソフトスーツを着て通勤するような男たちは「ビジネスマン」「ヤンエグ」と呼ばれ始め、異性コミュニケーション手段としての夜遊びやレストラン事情にやたらと詳しくなった。
一方でワンレン髪の女たちは、恋愛の成功服/仕事の勝負服としてのボディコンを装ってアフター5を謳歌。高級ブランドで統一されたファッションや年数回に及ぶ海外旅行は、次第に「ニューリッチOL」とマーケティングされるようになった。さらに1986年に施行された男女雇用機会均等法によって、一般職の腰掛け~寿退社~主婦といったお決まりのコース以外にも、総合職に就くキャリアウーマンの選択肢も現れた。
この頃についてもっと詳しく知りたい方はこちらのコラムで(外部サイト)。
史上最もリッチな青春~狂乱バブル80’sの男と女たち
『誰かに見られてる』(Someone to Watch Over Me/1987)は、日本ではまさにそんな頃(1988年3月)に公開された。主演は『プラトーン』でブレイクしたトム・ベレンジャーと、トム・クルーズと結婚していたミミ・ロジャース。監督は『ブレードランナー』のリドリー・スコット。
同時期には大ヒットしたミッキー・ローク/キム・ベイシンガー主演の『ナインハーフ』(1986)やマイケル・ダグラス/グレン・クローズ主演の『危険な情事』(1987)があり、こうしたエロティックでアーバンなサスペンスは、好景気に沸く都市生活を享受する20〜30代の男女にとって十分にフォローする価値があった。
そして何よりもスクリーンに映るニューヨークの光景=レストラン、ホテル、高級アパート、地下鉄、舗道、公園、夜景の美しさなどが、東京のそれとシンクロしているように見えたのだ。今改めてこの時代のフィルムを観ると、独特のムードを放っているのが分かる。
映画は、成功者や著名人たちが集まるディスコのオープニングパーティで殺人を目撃してしまったハイソサエティな独身女(ミミ・ロジャース)と、彼女を護衛することになった下町の妻子持ちの刑事(トム・ベレンジャー)の不倫とサスペンスを真夜中の冷気の中で追いかけていく。そんな中、犯人は意外な行動に出始める……。

昔から恋は盲目というけれど
それでも恋を探せという
だから私も素敵な人を
求めよう恋の相手を
私を探し求める人はどこ
早く私の前に現れてほしい
誰か私を見ててほしい
暖かく見守っていてほしい


音楽はジョージ・ガーシュインが1928年に発表したスタンダード・ナンバー「Someone to Watch Over Me」を使用。そんなラブソングをスティング、ロバータ・フラックが歌い、ジーン・アモンズが演奏している。こちらも妙に心地いい。余談だが、オープニングのパーティシーンで、エディ・マーフィが一瞬映っているのが見えた。
予告編



スティングが歌うジョージ・ガーシュイン。


『誰かに見られてる』

*日本公開時チラシ


*参考・引用/『誰かに見られてる』パンフレット
*このコラムは2019年7月に公開されました。
評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから
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