別れのブルース〜日本初の“ブルース歌謡”の誕生秘話と、淡谷のり子が経験した特攻隊員たちとの悲痛な別れ

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特攻隊の慰問にいったときのこと。
白鉢巻をした兵隊さんがいっぱいいるんですよ。
ちょっと横を向いたら2~30人もいたでしょうか.
中には子供みたいな兵隊さんもいるんですよ。
まだ15~6歳ぐらいの。
だから私、係りの人に訊いたんです。
そしたら「はい、特攻隊員で平均年齢16歳です。命令がくれば飛びますよ!」って。
「もし歌っている最中に命令が下されたら行かなければなりませんからごめんなさいね。悪く思わないでください!」って。
命令がこなけりゃいいなあと思いながら歌っていたら…やっぱりきたの、命令が。
さっと立ち上がって、私の方を向いてみんなニコニコ笑いながら、こうやって(敬礼の格好)行くんです。
もう、泣けてなけて、声がでなくなりましたよ…悲しくて。
あんな悲しい想いをしたことはありません。

『徹子の部屋〜戦後60年、終戦記念日特番〜』(テレビ朝日)より



窓をあければ港が見える
メリケン波止場の灯が見える
夜風汐風 恋風乗せて
今日の出船は何処(どこ)へ行く
むせぶ心よ はかない恋よ
踊るブルースの切なさよ

この「別れのブルース」は、1937年(昭和12年)に発表された歌で、日本における“ブルース歌謡”の第一号として知られている。
日本で初めて題名に“ブルース”と付けられたのは、1935年(昭和10年)にヘレン雪子本田の歌唱によって発表された「スヰート・ホーム・ブルース」だが、広く大衆に知らしめたという意味ではこの楽曲をおいて他にないと言われている。
歌手・淡谷のり子はこの歌の後に発表した「雨のブルース」などの連続したヒットによって“ブルースの女王”と呼ばれるようになる。
──ブルースのルーツをさかのぼると、古くは西アフリカ、そして17世紀から19世紀の間にアメリカ大陸に連行された黒人奴隷の歴史に辿り着く。
西洋の音階で言う三度の音、すなわち「ド」に対する「ミ」が、クラシック音楽の感覚で正しいとされる音程よりフラットになるブルーノートスケール(ブルース特有の音階)は、黒人がアフリカ音楽から持ち込んだ要素である。
1936年(昭和11年)、日本コロムビアレコードの専属作曲家として入社した服部良一は、次々に作曲や編曲を手掛けつつも、独自の個性の確立を模索していた。
この背景には、従来の専属作詞家や作曲家同様に結果を出すことを会社から求められていた上に、結婚したばかりで新たに家庭を築こうとしていた個人的な事情もあったという。
そんな中、服部は“決定打”となるような楽曲を書けずに苦しみながら…ある日、自分にしか書けない“和製ブルース”を作ろうと思い立った。
服部は、当時いまひとつ芽が出ずにくすぶっていた作詞家の藤浦洸にポケットマネーから30円を渡してこう言った。
「日本でブルースの雰囲気がある場所はここしかない!」
服部は横浜の本牧にあるチャブ屋(日本在住の外国人や外国船の船乗りを相手にした売春宿の俗称)を舞台に選び、取材させたのだった。
そこは遊郭や芸者に飽きた“遊び慣れた”日本人も出入りする場所で、エキゾチックなムードが漂っていた。
渡された30円をふところに本牧で一夜遊んだ藤浦は、翌日服部に会うと、おもむろにノートを開いて歌い出しのフレーズを書いたという。
窓をあければ港が見える
メリケン波止場の灯が見える

服部はそれを見て「これだ!」と叫び、早速作曲に取りかかった。
そのつぶやくようなメロディーを“あえて”ソプラノの淡谷に歌わそうと白羽の矢を立てた。
当時、譜面を渡された淡谷は2オクターブも低いアルトでは絶対に歌えないと反発したという。
淡谷の歌の上手さを知っていた服部はこう嘆願した。

「ブルースは黒人の苦しみ、悲しみを歌ったものです。ソプラノもアルトもない。無理をしてでもキーを下げて歌って下さい!」

青森出身のじょっぱり(頑固者)な淡谷は、意を決してわざと深酒と煙草でノドを荒らしてレコーディングに挑んだという。
出来るだけマイクに近づいて囁くように歌い、見事に服部の要求に応えたのだ。
こうして完成した日本初の“ブルース歌謡”は、発売当初、あまり売り上げは芳しくなかったという。
淡谷は当時の貴重なエピソードこう語っている。

あのね、「別れのブルース」は最初国内ではあんまり売れなかったのよ。
ところが発売翌年の昭和13年(1938年)の暮れころからどんどん売れてきたんですよ。
それも満州の兵隊さんからなの。
それが大阪から東京へと(広まって)いって、トップをきっていったけれども、次の年の昭和14年に発売禁止になったの…絶対に歌ってはいけないと。
センチメンタルだからだって、国民を鼓舞するような歌でなくてはダメだって。
あの頃はよく兵隊さんの慰問に外地に行って歌ったの。
確かあれは上海だったかしら…東京の部隊だったのね。
都会的な歌をたくさんリクエストされたあと「もう一つどうしても歌ってくれ」と言われたの。
それが「別れのブルース」だったのよ。
問題の歌だったので、少しためらったけれど…明日がわからない兵隊さんでしょ、だから私歌ったのよ。
そのとき歌い始めてひょっと見たら、憲兵さんと将校さんがホールから出ていったのよ。出ていってくれたの。
そして、ひとつへだてた中庭の向こう側からこちらをのぞき見るように聴きながら泣いていているじゃないの…そういうことがあったの。

『徹子の部屋〜戦後60年、終戦記念日特番〜』(テレビ朝日)より
<引用元・参考文献『昭和歌謡100名曲』塩澤 実信 (著)/ 北辰堂出版>
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8月26日(金)東広島(西条)HOTEL VAN CORNELL屋上
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